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2011年度石本基金若手研究助成 結果報告

2011年度の「石本基金 若手研究助成」審査結果は、以下のようになりましたのでご報告いたします。

審査員:金子洋之(作業部会長) 出口康夫 加地大介 関口浩喜

審査結果:全9件の応募のうち、以下の3件を採用とした。

採用者及び研究題目

助成金額:1名につき35万円(期間:2011年4月-2013年3月)

審査経過

 今回応募者は全体で9名であった。各応募者の研究計画を審査委員に回し、審査委員ごとの評価を出した上で、全体の総合評価を行うという従来の方式を踏襲して審査を行った。今回は、三位と四位が同点であったっため、同点の応募に関してのみ、審査委員に再度の審査をお願いし、改めて順位づけを行った。その結果が、上記の三名を採用するということである。

 以下、今回採用の三名の研究計画について簡単に触れておく。

 宮原克典氏の研究は、現象学、認知科学、心の哲学という多様な観点から、内在主義的な社会的認知理論に対する代案として、エナクティブな心の立場から提出された社会的認知の相互行為理論を手掛かりに志向性理論の批判的検討と構築を行い、それによって、新行動主義および新プラグマティズムの志向性観の問題点を明らかにし、志向性の成立における社会的/言語的環境と身体性の両方の役割を強調するような代案を提出する、というものである。計画の実現可能性を危ぶむ意見も一部あったが、計画の手堅さや問題意識の明確さの点で高い評価が得られた。

 谷川卓氏は、分析形而上学の脈絡において、D・ルイスの言う「ラムジー的謙遜性」を題材とし、これを懐疑論的議論としてではなく、形而上学的原理の認識論的正当化をめぐる問題として捉えなおし、その上で議論の前提となっている形而上学的な原理(組み合わせ原理と通性原理)を認識論的に正当化することができるかどうかを検討する、という研究である。この研究については、その独創性を高く評価する声があった一方で、時間的に可能かどうかについて疑問視する意見があったことも付け加えておきたい。

 金子祐介氏は、カルナップのアウフバウにおける認識論を、従来の現象主義・検証主義・論理実証主義的解釈から解放し、再構築して行くことを目指すという研究である。これについては、研究のあり方がナイーヴすぎるなどの批判もあったが、その堅実性と意欲の高さが評価された。

「若手研究助成」作業部会長 金子洋之


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